活用事例CASE

Topic_006

2025/11/22

微生物バイオマス農法でつくる「いちご」(土耕栽培)

いちご栽培の名人が重視した「水を切る」技術と、C/Nバランスで生殖成長をコントロールする考え方

高品質・高収量を実現するいちご栽培の名人たちは昔から、「水を切る」ことで花芽分化を促す高度な技術を使ってきました。

これは単なる“ストレス”ではなく、

  • 根から吸う水と窒素を意図的に抑える

  • 水を抑えることで吸窒が止まり、光合成が強まる

  • その結果、植物体内で 炭素(糖)>窒素 の状態を作る

という 生殖成長(花芽)をつくるための明確な操作 です。

C/Nバランスで成長方向が決まる(北海大学大学院・佐藤長緒准教授)

北海大学の佐藤准教授が示した理論では、植物は体内の C/Nバランス によって成長方向を決めます。

  • 炭素C > 窒素N → 生殖成長(花芽・果実)

  • 窒素N > 炭素C → 栄養成長(葉・茎)


名人の“水を切る”技術は、この原理そのものです。
ただしこれを水管理だけで実現するには、

  • 土壌構造

  • 通気性

  • 保水性

  • 根量

すべてが揃っていないと成り立ちません。だからこそ、再現が難しく“名人芸”と呼ばれてきました。


Nを減らすのではなく「Cを増やす」現代的アプローチ

ここで登場するのが 「エキタン有機+炭水化物施用」 という考え方です。昔のように極端に水を切ってN吸収を止めるのではなく、

  • アミノ酸で根の活動とホルモンバランスを整え

  • 炭水化物で光合成産物(C)を補い

  • 体内のC量を主体的に増やす

ことで 意図的に C/Nバランスを生殖成長側へ引っ張る。

つまり、

名人技の“本質”を、誰でも再現できる形に落とし込んだのがこの方法です。


温暖化による栽培への課題

温暖化の影響は東北地方でも年々はっきりと現れています。夏期の高温化、渇水、そして極端な天候の増加が、栽培環境をこれまでにないほど不安定にしています。

高温になると、植物は体温を維持するために呼吸が浅く早くなり、光合成で蓄えた**炭素C(糖)**を消費してしまいます。本来なら成長や果実肥大にまわるエネルギーが“体力維持”に使われてしまうため、植物内部の炭素ストックが目減りしやすくなります。

一方で、地温の上昇によって、施肥した窒素だけでなく、土壌中の有機物からも窒素Nが溶け出しやすくなるため、植物は意図せず多くの窒素を吸収してしまいます。

その結果、栽培は**N優位(窒素過多)**へと傾きやすく、

  • 根の更新が鈍る

  • 病害が出やすくなる

  • 花芽が不安定になる

など、植物にとって“成りたがらない生育”が起きやすくなります。

いま求められているのは、どうやってC/NバランスをC(炭素)優位へ戻すか。

温暖化期の栽培は、まさにここが最大のテーマになっています。


炭素C優位がもたらす花芽の安定と病害の減少

C優位の栽培を3年以上続けている生産者からは、

  • 花芽分化の安定

  • うどんこ病の明確な減少

  • 場合によっては薬剤散布ゼロ

といった変化が報告されています。
これは、

  • 同化産物(糖)の供給が安定

  • ストレスの少ない生殖成長へ体が整う

  • 根量の増加 → 微生物層の改善 → 病気に“負けない株”へ

といった複合効果の結果です。


根張りと果実肥大をつくる「オーキシン」

植物ホルモン オーキシン(IAA) は“根張りホルモン”とも呼ばれ、

  • 頂芽(新葉の先端)でつくられ

  • 下方向へ移動しながら

  • 根の再生・伸長を促す

という働きをします。
根を再生するために必要なのは、

  • アミノ酸(細胞の材料)

  • 核酸=リン(分裂のエネルギー源)

  • 植物ホルモン(再生のスイッチ)

さらに近年は、

根圏の微生物自身もアミノ酸を代謝してオーキシンやサイトカイニンを作る ことが分かってきました。


エキタン有機+炭水化物灌水が“ホルモンの供給源”になる理由

アミノ酸+炭水化物を定期灌水することで、

  1. 微生物のエサを確保

  2. 微生物が増殖

  3. 微生物が植物ホルモンを代謝・供給

という循環が生まれます。

つまり、

植物自身のホルモン+微生物由来ホルモンが同時に働く環境 になるため、根の動き、花芽、果実肥大の安定性が高まります。


オーキシンが十分な株はどうなるか?

  • 細根が深く細かく張る

  • ランナーと側枝の動きが安定

  • 花芽が揃いやすい

  • ストレスに強い

  • 変形果が少ない

  • 微生物ホルモンにより“根が止まらない”株になる

つまり、

C優位 × アミノ酸 × 微生物 → 生殖成長が揃う株

という仕組みが成立します。


頂芽優勢がよく表れた果実の“順次肥大”

頂芽優勢

写真の株は、オーキシンによる 頂芽優勢 がきれいに働いています。

  • 一番果が先に赤く大きくなる

  • 二番果・三番果はその後ろで待機

  • 果実が“列”になって順番待ち

これはホルモンバランスが良く、根が動けている株の典型です。

▶︎ 頂芽優勢とは?

  • 頂部でつくられたオーキシンが

  • 下方向へ流れ

  • 最も早く形成された果実へ栄養を優先配分する性質

そのため、

  1. 一番果が肥大 → 着色

  2. 一番果を収穫すると二番果が動き出す

  3. 二番果を収穫すると三番果が太り始める

という リレー式の肥大サイクル ができます。


なぜ順次肥大すると大果が多くなるのか?

  • 1つの果実に十分な資源(糖・アミノ酸・水・ホルモン)が集中

  • 肥大が安定し形が揃う

  • 次の果実へスムーズにバトンタッチ

  • 小粒果が激減

つまり、

頂芽優勢が働く株ほど “大粒連発” が自然と起こる ということです。


さらに本質的な話

エキタン有機+炭水化物灌水を続けると、この“頂芽優勢”が乱れにくくなります。

  • 根が止まらない

  • 微生物ホルモンの供給が途切れない

  • C供給が豊富

  • N過多を防いで過繁茂を抑える

  • 果実肥大が一定リズムで流れる

→ 肥大順序が美しい株 が増える。


微生物バイオマス農法とは?

微生物の“循環力”と植物の“再生力”を最大限に引き出す栽培体系です。

  • 土中:微生物増加→ 養分化 → 微生物バイオマスの循環

  • 植物:細根の再生 → 蒸散による水分・養分循環

この 土中循環 × 体内循環 × 根の健全性 が途切れなく回ることで、

いちごは強く・大きく・安定して育ちます。


エキタン有機+炭水化物灌水の意味

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定期灌水により、

  • 微生物のエサを安定供給

  • 増加→ 養分化サイクルが止まらない

  • 細根更新が途切れない

  • 根圏がふかふかで酸素が通る

という「微生物活性の安定化」が起こります。

その結果、

✔ 大粒化

細根が常に新しく、吸収力が高い。

✔ 品質向上

根域環境が安定し、実の充実・糖度の伸びにつながる。

✔ 生育のブレが小さい

高温・乾燥・湿害の影響を受けにくい。


これはいちごに限らず全ての植物で再現される現象です。


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